「坂口くん、また成績トップだって?」
「今のところはね。すぐ抜かれるだろうけど」
「またまた~。坂口くんを抜く人なんか、この会社にいないわよ」
「そう?」
「この調子で頑張ってね」
「ありがとう」
大学を卒業後、この会社の営業マンとして働いている。
外回りが多い営業は、体力と精神力が勝負。
契約のために歩き続け、常に笑顔で対応。
初めは向いてないなって思っていたけど、成績が伸び続けているってことは向いているのかもしれない。
「大地、今日の夜空いてる?」
「柊…」
呼び捨てで声を掛けてきたのは、同期の柊 朱音(ひいらぎ あかね)。
俺と同い年で、独身。
「明日休みだし、久しぶりに飲みに行こうよ?」
「あぁ、いいよ」
「本当?じゃあ、いつものとこで」
「了解」
柊とは、よく2人で飲みに行く。
同期だから話しやすいってのもあるけど、お互いフリーだから気を使わなくてもいい。