「こんな夜中に何の用?」
「・・・」
栄養ドリンクを買うために寄った、コンビニ。
「店長がお客に対してそんな態度とるなよ」
「不審者のオッサンに売るものなんてないわ」
「!?」
「女子中学生を泣かせた不審者に売るものなんてないわ!」
今、一瞬だけオカマ店長から男の顔が見えた。
「不審者って・・・俺は何もしてねぇぞ」
「ウソよ!あの日からユキちゃん一回も店に来なくなっちゃったんだから!きっとここに来ると、不審者に会っちゃうからそれが嫌で来ないのよ!」
「不審者、不審者言うな!・・・って」
一回もここにも来てないのか?
2週間も?
いつもここでご飯買ってた少女が?
「何よ、やっぱり思い当たることがあるね!?」
「ないわ!・・・それよりアイツ、2週間も学校に行ってないらしいんだ」
「えぇ!?ここにも、それぐらい来てないわよ!?」
ここに来れば店長が何か知ってるかと思ったが、店長も何も知らないとなるとー・・・
「まさか、ユキちゃん・・・自殺ー・・・」
「おい。やめろよ」
「だって、学校にも行ってないんでしょ?ここにも、来てないし・・・家庭の事情も複雑そうだし・・・運命の男には泣かされるし」
「運命の男ってまだ言うか」
「だってユキちゃんと最後に会った日、ものすごく思い詰めた表情で"大地くんに会いたい"って言ってたの。だから、私が大地くんの会社までの地図を書いて渡してあげたんだけどー・・・帰りに見かけたときには、今にも消えてしまいそうな雰囲気で歩いてたわ」
「・・・」
会社まで来ようとしたってことは、俺に何かを言いたかったのか?
「一人にはしておけなくて、私の仕事終わってから夜ご飯でも一緒に食べて話を聞こうと思ったのに、私が不審者なんかにユキちゃんを預けたのがいけなかったんだわ!!」
「まだ不審者言うか・・・」
「とにかく後悔しててもしょうがないわ!今からユキちゃん家行くわよ!!」
「今から!?」
店長がエプロンを脱ぎ、"頼むわね"とレジにいるバイトに向かって言った。
「大地くん、家知ってるでしょ!?行くわよ!」
「ちょっと待てよ!」
腕が引きちぎれるぐらい強い店長の力で、車に乗せられた。そして、助手席に乗った店長。
「早く出発しなさい!」
「・・・はい」
勢いに押され、少女の家へと猛スピードで向かった。