「坂口くん、おはよう」
「…っ香川専務!おはようございます」
そうだ、今は仕事中だった。
自分のデスクで少女のことを考えている場合じゃない。
「昨日の契約とれたんだって?」
「あ、はい。なんとか…」
「またまた…余裕だったって聞いたぞ?」
「とんでもない!」
「君は相手の考えが読み取れる能力を持っているのかもしれんぞ。ははは」
「いや…ははは」
「これからも頑張ってくれよ」
「はい、ありがとうございます」
そう言うと、専務は定例会議があると言い出て行った。
「…びっくりした」
脱力するようにイスに座った。
めったに、専務なんか来ないのにー…昨日の契約、結構大きかったからか?
普段、笑いもしない専務が冗談を言うぐらい上機嫌だったなー…
"君は相手の気持ちが読み取れるのか"
んなわけねぇだろ…
中学生の少女が考えていることはわからなくて悩んでるのに。