[彼の旅は無駄ではなかった]

 ヴァラオムは、血なまぐさい場に流れる暖かなそれらに目を細めた。

[皆が心に秘めていた強さが引き出されてゆく]

 己を探す旅が、折しも先の運命を変えるものとなり、ゆるやかにそれぞれの意思をつなげていく。

 そのつながれた糸を堅く結びつけたのはミレアたち魔導師──彼らがいなければ、この地に集まることは適わなかった。

 彼が旅を続け、しっかりと向き合ったからこそ、彼らもまた一意専心(いちいせんしん)に努めた。

 これこそが、ネルサが恐れていたことなのだ。

 分断されていた意志を一つにする力を持つシレアの存在は、奴の野望には邪魔でしかない。

 そしてシレアから聞かされた諸々(もろもろ)の事柄は、彼の体に流れるドラゴンの血そのものに対するものだ。