目の前に見えているのに、とても遠く感じられて歯がゆい思いをしながら懸命に向かう。

「嘘でしょ」

 たどり着くまで、そんなはずは無いと何度も思考を巡らせる。

「レキナ! ちょっとあんたたち、何してるのよ!」

「モルシャ! 無事だったんだね!」

「ひとのはなし聞いてる?」

 若干の苛つきを込めて問いかけると、レキナは短剣を握りしめて目を伏せた。

「僕たちにも出来ることはきっとある」

「何言ってんの? 死んだら終わりなのよ」

「ぼ、僕たちだって、この世界で生きてるんだ!」

 いまここで戦わなかったら、死ぬより後悔すると思ったんだ!

 言い切ってモルシャを見つめ返した。

 自分たちがどれほど役立たずなのか知っている。無駄死にするかもしれない。

 それでも──

「それでも、動かずにはいられなかったんだ」

 戦っている君をただ傍観していいはずがないんだ。

「馬鹿ね」

 いつも臆病で軟弱で、こんなにも格好良かったかしらとレキナを見つめる。