──モルシャは攻撃をかわしつつ、その身を活かして手足の腱を切り裂いていく。

「もう! 勝ってるのか負けてるのかどっちよ!」

 徐々にこちら側にも仲間が増えてはいるが、勝てるというイメージは全体からまだ伝わってこない。

「やっぱりエルフは綺麗ね」

 そんな余裕がある訳じゃない。

 しかし、何か言っていなければ気力が持たない。

「うげ──。なによ、トカゲが一杯いるじゃない」

 舌を出してうんざりしながらも、さすがの強靱な体に感心する。

「戦ってくれるなら有り難いけど」

 そうつぶやいて手にある短剣を見下ろした。

 一人前になった手向(たむ)けにと師匠から授かった短剣は、こんな状況でも勇気を与えてくれるようだった。

 気概を込めて顔を上げたとき、見知った影が視界を過ぎる。

「えっ!? うそ!?」

 どうして!? 声を荒げると同時に駆け出していた。