「空翔……!?

…どうして此処に?」



 目の前の男で遮られてはいるが、声で先輩が驚いているのが分かる。





「最近、こっちに戻って来たんだ」


「……そう、母さんと…?」


「あぁ」




 それきり、黙り込んでしまった二人に困惑する。さっき、目の前の彼は、先輩のことを兄貴と呼んでいた。その上、声も、一瞬だけ垣間見た彼の顔も、先輩と似通っているのだから、兄弟なのだろう。


 だが、生憎中学ではそんな話は聞いたことなどなかったし、何度か姉や部活の人に連れられて先輩の家に訪問しているが、彼らしき姿など見たことがないし、そんな影もなかった。


 何より、一度だけ会話を交わしたことのある先輩の父親は、自分と彼の二人暮らしで寂しいが、充実している、と溢していたのだ。