気がつけば、姉が目の前に居た。

「……っ、どうしたの?」


 いきなり姉の顔が、アップで視界に入ってきたことに、たじろぐ。



「海翔も、来るって言うんだけど、桜はどうする?」

 どうする、などと聞いてはくるものの "お前はついて来るな" と、その目が語っていた。


「私は、いいよ。二人で楽しんで来て」


 思ってもいないことを、貼り付けた笑みで吐き出す。夕飯はいらないと言外に伝える姉に、目で了承し、先輩に体を向け、軽く頭を下げた。


「姉をお願いします」


そのまま踵を返そうとするが、できなかった。