「なぁ…弥生…」


俺は泣いている弥生を見つめながら静かに名前を呼んだ時だった。



「弥生!!」



低くて太い声がどんどん大きくなってくる。


何度か弥生の名前を知らない男が呼んでいるのだ。


その男は俺と弥生の方に走って向かっている。



「健ちゃんっ」


それに応えるように弥生もその男の名前を呼んだ。



息を切らして走ってきた男は俺たちの前に現れた。



俺はもう分かってしまった。



その男が誰なのかということを。