気まずい沈黙が一瞬あったけど、
瞬さんは、くるりと振り返り、そのままわたしを連れて歩き出した。
大塚くんは、追いかけて来なかった。
瞬さんに引っ張られるわたしの手は、
さっきまで、震えていたのが
嘘のようだった―。
「‥座って」
駅の入口の、いつものベンチまで来て、瞬さんが静かに言った。
そのまま、座らせられる。
「あ、あの!瞬さん、ありがとう‥ございました‥」
言い終わると同時に、安心からか涙が出てきた。
「あっ、ごめんなさい‥」
急いで涙をひっこめようと我慢する。
「いいよ、泣けよ」
頭に優しい感触。
「‥っ、ひっく‥」
瞬さんの胸を借りて、泣き出してしまった。