顔の前にあった手がいつの間にか、大塚くんの手の中にある。




「やっぱり送っていくよ」



わたしの手をつかんだまま、にっこり言う大塚くん。



その笑顔とは反対に、手の力が強い。





「い、痛いよ、大塚くん?」




わたしの言葉が聞こえないのか大塚くんは
ぐんぐんわたしの手を引っ張って階段を下っていく。



「お、大塚くん!は、離して‥」




強引に引っ張られて、足がもつれるわたし。




大塚くん、どうしちゃったんだろう?



‥怖いよ‥





「‥離してってば!」





わたしの大きな声に、やっと大塚くんの足が止まる。




それと同時に手を振り払ったけど、大塚くんの手はわたしの腕をつかんだまま。




「‥ごめん‥」





大塚くんがうつ向いて、絞り出すような声を出す。





「‥ううん、大丈夫‥」




そう言ったけど、わたしの手は震えている。





「明日美ちゃん、俺‥」

「明日美!」