「な!泣きません!」
毛布でぱっと顔を隠した。
佐々木先輩と違って、シュンさんはちょっと意地悪だ。
「泣きたい時に泣いとけば?」
毛布の上からデコピンされる。
「え?」
わたしの気持ち、知ってる?
なんで?
あんな一瞬で、分かっちゃったの?
ぐるぐるパニックになってるあたしに、
「ためると後が辛い。泣いとけ。」
ぱさっ。
また視界が黒く覆われる。
それと同時に、
ふわっと頭が優しく包まれた。
わたし、戸惑いながらも
ぽんぽんっと頭をなでられると
不思議と涙が溢れて来てしまった。
しばらくたって、おそるおそる顔をあげる。
「あのー‥」
「よし!帰るか」
「え?」
わたしの言葉を遮り、
シュンさんがわたしのカバンを持って言う。
「ちょ、ちょっと待って‥」
毛布をたたんで追いかける。
外に出ると、シュンさんは店長と話してた。
わたしもお礼を言ってお店を後にする。
「ほんと、すみません‥色々ありがとうございました!」
たたたっと小走りで着いていきながら、お礼をすると、
トンッ!
「いて!」
急に止まったシュンさんにぶつかってしまう。
「あんた、ほんっと、あぶなっかしいな。」
くすっと、口の端を少しあげて、
また頭をぽんっとされた。
「涙ちゃんとふけよ」
手が頬に触れる。
反射的にびくっとなって顔がかーっと赤くなる。
シュンさんは、ぱっと手を離し、
「送る」
と言って歩きだした。