麻里が背負っていたリュックから取り出した書類を葛西は手渡した。

「そうしてくれるかね、頼むよ」

そう言って目を閉じる。とたんに葛西は酷く老けたように見えた。

「他の３人も聞いて下さい」

透き通るような声だった。外見通り綺麗な声だが何処か機械のようで感情が無い。

「８月１０日、東慶介さんは事故現場の道路から防風林を抜けた海岸で友人６人とキャンプをしていた。午後８時３０分に道路に面した自動販売機でビールを買う為に一人で道路に出る。そしてその日は丁度花火大会のあった日で、クライマックスの３尺玉が上がったのを見た直後に視線を道路に移すと、センターラインをオーバーした白いスポーツカーが黒っぽい車に激突する所を目撃した」