「何度も言うようだが・・・君は帰りなさい。これは俺と司の問題だ。麻里ちゃんまで巻き込みたくない」

真っ黒い革張りのソファーに座った麻里と呼ばれた女は青ざめた顔で俯いたまま首を振った。

「・・・嫌です」

男は溜息をつきながら緩慢な動作で煙草に火をつけた。揺らめく青白い紫煙が生き物のように揺らめく。

2,3回煙を吐き出しただけで灰皿にねじりつけた男は立ち上がってサイドボードのガラス戸を開けた。

「何か飲むかね?」

「いえ・・・それより、この人大丈夫ですか?」