「まあこれでも飲みなさい」

黙って座ったままの麻里に葛西は湯気のたつコーヒーを差し出した。

黙ってそれを手にする。

「いい香り・・・」

地下は完全防音になっているし、モニターの電源も切ったので亜衣の泣き叫ぶ声はここには届かなかった。

カップに波打つ褐色の液体をゆっくりと口に入れる。熱い温度が喉から全身の血管へと行き渡るような感覚に麻里は目を閉じた。

「少し疲れました」

「そうだろう。君にはやっぱり酷な仕事だった。君を巻き込んでしまった事を後悔してるよ。司に尽くしてくれたのに恩を仇で返してしまった」