それは別に、一歌の耳がすごいわけではない。


それが、葉瑠の実力と才能なのだ。


一度聴いただけで、人の耳にその歌を植え付けてしまう。


それ程までに、葉瑠は歌を「伝える」力を持っているのだ。


「話題作のドラマの主題歌で復帰かも、て聞いたんだけど、違うみたいだね」


笹原がCMを眺めながら言う。


確かに、CMには、何かのタイアップになるようなことは示されていない。


一歌はその言葉を聞き流し、CDのリリース日を頭に刻んだ。