鼓動は早く、いわゆる、どきどきとしている状態だ。
かっこよすぎる笑顔を見せられたせいだ。
一歌は必死に、鼓動が早いことに理由をつけた。
「もう、ここで大丈夫です」
一歌は心臓の音を隠すように、大きめの声を出した。
「もう遅いし、家まで送るよ」
修二の返しに、一歌は時計を見た。
確かに、もう十時を回っている。
「いや、大丈夫です」
一歌ははっきりとした声で言った。
このまま、狭い車内に二人でいても落ち着かないからだ。
「そう?」
修二は仕方なさそうに言い、車を路肩に寄せた。
「今日は本当にありがとうございました」
一歌は車を降りる前に、もう一度お礼の言葉を口にした。
「どういたしまして」
再び笑う修二に、一歌の心臓はまた跳ねた。