「着いた」
修二は急に車をカーブさせ、駐車場らしき場所に車を入れた。
場所はコンサート会場だ。
しかも、中原裕樹の。
そういえば、と一歌はバックする車の中で思った。
裕樹も竣平と同じタイミングでツアーをしていた。
「……何で、ここなんですか?」
一歌は少し不満げに口を開いた。
「あ、一般席だけどいい?」
修二は一歌の言葉を無視して会話をする。
「あの……っ」
「もう開場してるから行くよ」
修二はそう言い、颯爽と車から下りた。
一歌も慌ててそれについていく。
一般席などで大丈夫なのだろうか。
一歌は修二の背中を追いかけながら、そんなことを考えた。
周りの人達に修二の存在がばれたら、ライブどころではない騒ぎになるはずだ。
そんなことになったら、裕樹に申し訳無いとか、思わないのだろうか。
一歌の心配を他所に、修二はぐんぐんと前を歩いていった。