最初は、何故修二が自分と恋愛なんてしようとしているのだろう、と思ったが、それは間違いだ。
修二は恋愛をしようとしているだけ。
だが、その理由だけは全く分からないが。
「一目惚れ、て信じる?」
修二は一瞬だけ一歌を見て言った。
「信じません」
というか、嘘でしょ? と、一歌は心の中で付け加えた。
「ええ、信じてよ」
一歌の返しに、修二はそう言って笑った。
一歌はそこで初めて、修二の笑った顔を見た気がした。
テレビや雑誌では勿論見たことはある。
だが、目の前で、ちゃんと笑ったのを見るのは初めてだった。
「……何処、行くつもりなんですか?」
思わずどきどきしてしまい、一歌はそれを隠すように話を変えた。
よく話を変える女だと思われていそうだが、この気持ちがばれるよりはいい。
「それはついてからのお楽しみ」
修二はそう言い、カーオーディオのスイッチを入れた。
すると、車の中には、一歌の歌声が流れ出した。
わざわざ、自分のCDを買ってくれたのだろうか。
いけ好かないとこら山程あるが、CDを買ってくれたことに、一歌は心の中で感謝した。
修二は大分長い間車を走らせた。
見知らぬ景色と自分の歌声。
快適なドライブ、とまではいかないが、なかなか悪くはない。
だが、何処に連れていかれるかだけは不安だった。