一歌はそんな修二に思わず見とれた。


何でも似合ってしまう人って、本当にいるんだな、と佇む修二を見ながら思ったのだ。


すると、修二は一歌の姿を見付け、軽く右手を挙げた。


「お、早いじゃん」


そんな仕草も、服装と絶妙にマッチし、普通の街中にいるだけなのに、何かの撮影でもしているかのような雰囲気。


芸能人になるのは、こういう人なのだ。


一歌は少し離れたところから修二を見て、そう実感した。


自分には到底纏えないオーラ。


目の前にいる人は、それを生まれながらにして持っているのだ。


一歌は虚しいだとか、羨ましいだとかを、遥かに越えた感情を抱いた。


それと同時に、自分には無理なのではないか、と思わされた。


こんな、いかにも普通な自分が、一世を風靡するようなアーティストになんてなれるわけがない。


一歌は修二が目前に来るまでの間に、そんなことを考えた。


きらきらとしたようなオーラを纏った修二に、一歌はゆっくりと口を開いた。


「あの、主題歌の話なんですけど……」


成り行きがどうとかではなく、自分にはこなせない。


そんな思いが強くなる。


「よし、行こう」


修二は一歌の言葉を遮り、足の向きを変えた。


一歌はそれに慌て、叫ぶように、修二に向かって声を張り上げた。


「あの、貴方に付き合うつもりで来たんじゃなくて、話をしに来たんですけどっ」


一歌の言葉が終わると同時に、修二はぴたりと足を止め、上半身だけを振り向かせた。


そして、右手の人差し指を唇に当て、少しだけ唇を尖らせている。


まるでCMのワンシーンのような光景だ。