一歌は朝からずっと携帯電話を握り締めていた。
何度も、電話を掛け、メールを送り続けた。
それを、ひたすらずっと繰り返している。
相手は修二だ。
今頃、修二の携帯電話の着信履歴とメールＢＯＸはストーカー被害に遭ったかのようになっていることだろう。
それでも、修二は電話には出ないし、メールも返してこなかった。
終いには、電話は直で留守番サービスに繋がる始末だ。
一歌は最初のうちは、仕事で電話に出ないのかもしれない、と思っていたが、直で留守番サービスに繋がるようななり、その考えを改めた。
修二はわざと、一歌からの連絡を無視しているのだ。
一歌はそれに気付くなり、急に苛立った。
修二と連絡が取れない以上、昨日言われた通りに行動しなくてはならないのだ。
そうしなければ、修二と話す機会が作れない。
出来れば電話だけで話しを終わらせてしまいたかったのに。
一歌は苛々した気持ちで出掛ける準備を始めた。
修二と直で話すと、更に苛立たされるし、上手く会話が進まない。
だから、電話で済ませてしまいたかったのに。
一歌は柴田に、今日には答えを出すと言ってしまった。
なので、今日中に修二とどうにか話しをつけなければならないのだ。
これを狙ったのだろうか。
着替えている途中、ふいにそんな考えが一歌の頭を過った。
いや、自分の行動は修二には分からない。
一歌はすぐにその考えを振り払い、たまたまの偶然というタイミングに更に腹を立てた。
こうなると、全てに腹が立ってくるのだ。
