「じゃあ、仕事が多いって事は?」


美香子はまるでクイズでも出題するかのように長い人差し指を上に向けた。


「人気者って事です」


修二はその指の先を見るかのように天を仰いだ。


「なら?」


美香子の誘導に修二は思わず吹き出した。


「新人の頃、よくこのやり取りしたよね」


修二の言葉に、美香子は懐かしそうに目を細めた。


「そうね」


二人にしか分からない、懐かしい思い出は山のようにある。


修二と美香子は顔を見合わせて笑った。


「じゃ、頑張って働きますか」


修二はそう言ってから、大きな伸びをした。


これが、修二が仕事の前にする、お決まりの気合の入れ方なのだ。