『人生っていうのは、自分で変えるべきものなんですよ』
テレビ画面の中に映る男は、言葉の最後にあはは、という笑いまで付けた。
容姿端麗、などという言葉も意味を成さない程に整った顔。
唯一の欠点はさして背が高くないことだが、甘く整った顔を前にすれば、そんなのは大したことではなく思えてしまう。
三十歳を過ぎているようには思えない若々しさ、独特の甘い低音、妖艶な眼差し。
日本中の女性を虜にしてしまうような魅力の持ち主。
いや、日本だけではない。
最近ではアジアを中心に人気を博している。
ヨーロッパにまで彼のファンがいるらしいが、それはつい先日の映画祭がきっかけだろう。
海外の有名な映画祭で、軒並み並ぶ世界各国の名優達の中で、男優賞を手にしたのは彼だった。
全てを兼ね備えた男、浅田修二。
今、日本で一番人気で、日本を代表する俳優だ。
「何で同じ世界にいるのに、こんなに違うんだろう……」
藍川一歌は、テレビを消しながら独り言のように呟いた。
「フィールドが違うんだから、仕方ないんじゃない?
日本人歌手がグラミー賞は、なかなか無理だよ」
一歌の独り言に丁寧に返したのは、彼女のマネージャーである笹原隼人だった。
隼人の顔は知的さと可愛らしさを兼ね備えていて、マネージャーではなく、彼自身が俳優やタレントとしてこの世界でやって行ける程だと、一歌は常々思っていた。
この春に入社したての彼は一歌と同い年だ。
彼が新しいマネージャーだと紹介された時、一歌は、売れない歌手のマネージャーなんて、新人で十分てことですか、と心の中で毒吐いた。