「も……朝…?」


掠れた声に舌っ足らずな口調。


「チッ……」


思わず舌打ちをする。




グイッ――――

未だ目の覚めていないエレナを抱えて立ち上がる。

しかし、腕の中のエレナは大して気にした様子もなく…

それがまた苛立ちを募らせる。

いつもは抵抗を示す癖に…



バンッ――――

わざと大きな音を立てて後宮の扉を開く。

まだ皆が動くには早い時間に廊下をスタスタと歩く音。



すると――――


「シルバ……?」


眠い目をこすりつつ、この状況にやっと反応を示すエレナ。

無言で歩く俺を不思議そうに見上げる。



だが、応えるよりも前に目的地へ着いた。

同じような部屋が並ぶ扉の前に立ち、勢いよく扉を開く。




「ニーナッ!」


部屋中に響き渡った声。




「ははははいッ!シルバ様!」


只でさえ狭い部屋に響く声に、部屋の主ニーナは飛び起きる。