そして、頭の悪いフォレストの事だ。
人の心を読める能力を持ったエレナを交渉材料にしようとしていた事は目に見えていて…
エレナが敵国の目にとまってしまった事は否めない。
エレナが目的かどうかは分からないが…
未だ国境付近にギルティス兵の影があるのは十分警戒すべき事だろう。
「デュークの話では、目立った動きはないとのことですが…」
「おおよそこちらの動きでも見ているのだろう。」
ギルティスは隙あらばアーク王国の領土を奪おうと目論んでいる。
ただ、内乱で混乱している今が狙い時だと思っているのかもしれない。
……いや、むしろそう思っていればいい。
エレナの方に目が向くよりも……
「けれど、何故引かないんでしょう?もうフォレスト伯爵はあちらに追放したと言うのに。」
「………」
ウィルもまた同じ考えだった。
何も言わないのを察して、ウィルが切り返る様に明るい口調で口を開く。
「どちらにせよ、イースト地区の警備は固める必要があります。」
「そうだな。」
ギルティスが攻め入るとしたらイースト地区だ。
国境警備を増員して警戒を強めておかねばならない。
不意にウィルの口から溜息が零れる。
「けれど…今回の件で再建計画も立て直しですか。また遠のきましたね。」
珍しく弱気な発言をするウィル。