先程から…いや、今日の朝からずっとエレナの事が気になっている。
イースト地区についてくる事を喜んでいたかと思えば…
出発する時にはブスッと膨れていて。
ニーナに聞けば、朝のあの出来事が原因らしく…
いつもは何もなくとも嬉しそうに笑っているものの、今日は朝から一言も口を聞かず、馬上でもだんまりを決め込んでいた。
そうなると調子が狂うのはエレナだけではなかった。
今まで人に左右される事なく生きてきたのだが…
どうやら違ったらしい。
いつもニコニコ笑っていたのが、急に目も合わせなくなるのは違和感がある。
また馬上と言うのが悪い。
見えるのは銀色の髪をなびかせた後姿だけで…
馬上が不安定でなければ、何度こちらを向かせようと思ったか。
エレナが俺の腕の中にいた事だけが、苛立ちを抑えていたのだ。
こんなにも苛立ちを覚えるなら、連れてこないと言う手もあった。
……だが、今回は今までの視察よりも長引く。
決して自分の部下の腕を疑うわけではないのだが、自分が我慢ならなかった。
傍に置いていなければ、いつ連れ去られるかもわからない。
こちらの警備は万全だとしても、本人があれではな…
人を疑う事を知らない純粋なエレナのことだ。
あっさりと騙されて、連れ去られかねない。