無意識に視線が捉えた先にいたのはシルバ。

頼ってしまうのは、いつもこの人だった。

それに、自分一人だけじゃあの子を助けられない。



「シ……」


助けを求める為に口を開いたと同時に…




バシャッ…―――――



水面を強く打ったような水音。

振り返れば、湖面を揺らす小さな波。

円を描くように広がる湖面の中央に視線をうつせば…




「ッ………!」


バシャバシャと水面を叩く子犬。

必死にもがいているけれど…



泳げないんだわ!


その事実を目の当たりにした瞬間。

愛くるしい瞳で私に懐いていた子犬の姿が過る。

あの子には私だけ……と言い聞かせた。




そして――――


バシャバシャッ……

シルバに助けを求めようとしていた事も忘れ、湖に脚を踏み出していた――――