あんなに小さいからまだ泳げない筈。
さっきだって、湖の中にまでは入って来なかった。
まさかとは思ったけれど…
キャンッ!
確かに聞こえる。
聞こえてきた方向をたどりながら視線を移していると…
「ッ………!」
湖に覆いかぶさる様にして伸びている樹の枝。
畔に植えられた樹が伸び、湖を覆う程に大きく成長したのだろう。
信じられない事に、子犬は湖の上の樹の枝にいた。
こちらの気も知らず、嬉しそうに樹の枝を歩いている。
太い枝だとは言えど、子犬のフラフラとした足取りにヒヤヒヤする。
「危ないわ!おりてきなさい!」
そう声をかけるも、声をかけられた事が嬉しかったのか、益々喜んではしゃぐ。
どうすればいいの……
この格好で樹には登れないわ。
自分のきている衣服をざっと見る。
ニーナが選んでくれた今日の服は丈が長く、動きにくいものだった。
私があの樹に上ったら枝が折れてしまいそうだし。
どうすれば……