バンッ……―――――
シルバが出て行った後の部屋。
「はぁ……怖かった。」
今まで溜めこんでいた緊張が吐き出される様に溜息をついたニーナ。
「そんなに怖かった?」
クスクスと笑いながらも、そう聞く。
だって、私には怖いとは思わなかったから。
シルバが怒りをあらわにする時は、あんな風に声を荒げない。
どちらかと言うと、シルバが芯の底から怒っている時は静かな怒りを湛え、見る者を凍らせるような雰囲気を持つ。
けれど、ニーナにとっては違ったらしく…
「部屋に入って来た時の表情と言ったら鬼の様でしたよぉ~」
そう言って嘆いた。
確かに、こんな早朝に押しかけられて怒られればそうも思うかもしれない。
直接怒られたわけではないので、ニーナの反応にクスクスと笑う。
「…けど何でこの夜着はダメなのかしらね。」
シルバがニーナに対して言っていた事を思い出す。
「寒くないのに……」
これは嘘。
シルバの言う通り春先と言えどまだ気温は低い。
だからニーナが用意してくれた夜着の上にショールを羽織っていた。
けれど、そのショールはいつもシルバが後宮へ帰って来る前にしまう。