自分が王城から出るとは思っていなかったのだろう。
「俺が王城を空けている時に何かあっては困るからな。」
1日空けるならまだしも、今回の様に長期にわたって城を空けるのは初めての事。
あれ以来、王城の警備は厳しくしたつもりだが…不安が拭えない。
王城に居る時でさえ、姿が見えない時はいつもエレナの事が頭の端にあるのだから重症だ。
「本当に?」
半信半疑の様子でそう聞くエレナ。
「ここに残るか?」
思ってもない事を口にする。
「行きます!私も連れて行って下さい。」
珍しく声を大きくして意気込む。
「ではニーナと共に準備をしておけ。」
「はい。」
嬉しそうな顔をして返事をするエレナに、拍子抜けする。
自分が攫われそうになったギルティスに近づくなど嫌がるだろうと思っていた。
まぁ…嫌だと言っても連れて行くつもりだったが。
「ニーナ、遠出をする準備をしろ。くれぐれも……わかっているな?」
「は、はい!外はもっと冷えますからね。」
冷や汗をかきながら引き攣った笑みを浮かべるニーナに、ひとまずは安心する。
これで今日の朝の様な事はないだろう。
「準備が出来次第出発する。」
そう言って、部屋を出た。