「何、お前。今さらそんな事でオレに何の用よ?」



さっきの優しげな微笑みとはまるで違って、自嘲的な意地の悪い笑顔を見せる。


感情の温度差が痛いくらいにわかったのと同時に、不穏な気配も伝わったから、先輩の問いかけに返事もしないで、ただ距離を取る事しか出来ない。


私のそんな態度を観察しながら、雑賀先輩は小さくため息をついた。



「ま、どうでもいっけど」



全然どうでもいいなんて風じゃない。


言葉は投げやりだったけど、刺々しさはそのままだ。



「でも、噂の事でオレを探してたんならぁ……」



まっすぐ射抜くような視線を向けながら、呟くように言う。



「お前も誘いに来たってコト?」



「はっ?」



思ってもみない発言に思考が停止する。



「意外だな~。お前も興味あんの? こういうコト」



「ちがっ……」



「まあ、そうだな。コレも手に入った事だし……」



言葉を遮って、女生徒から取り上げた避妊具をチラつかせたかと思うと、意味ありげな目で私を見つめて……。



「――使ってみる?」



「えっ!!」



一瞬だった。


素早く間合いを詰め、私の腕をきつく掴んで引っ張る。



「っ!?」



強引に引き寄せられ、先輩との距離が一気に縮まって、お互いの体が触れるか触れないかぐらいまで接近した。



今までこんなに雑賀先輩に近寄った事、ない。


耳元に寄せられる唇。


すぐそばで感じられる息遣い。


ある意味、くっつけられるより意識してしまう距離感だった。


触ってもいないのに近づけられた部分が熱を持っていく。


そして……。


今まで聞いた事もない少しかすれた甘い声が、私に囁きかけて来た。



「気持ちいいコト、しよっか?」



「!!」



体が瞬時にして硬直した。



『雑賀先輩には近づくな!!』



晶ちゃんの言葉が脳裏をよぎる。


私、絶対絶命?




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