わかっていながらも

蛍の髪にはさみを入れるのを拒む右手。

「ねぇともにぃ・・・好きな人が振り向いてくれないって
 こんなに、こんなに、つらかったんだね・・・?」

鏡越しの蛍は涙を目にいっぱい浮かべて

鏡越しの僕に話しかける。

「ずっと・・ずっと・・ずっと大好きだったのになぁ・・・。」

「あたし、頑張った。大好きな人に振り向いてもらうために。
 髪も長くした。
 体重落とした。
 仕草にも気を付けた。
 洋服も可愛くした。
分かってたのかな・・・ぁ 私が好きだったこと。」

「気づいてたよ。ずっと前に。」

「ともにぃ・・・」

僕は言ってからはっとした。

「気づいてたの…?」

「うん。」