「……可奈?」

「っへ?なに?」


翔くんの声に気づいたときには、もう近くに私の家が見えていた。


「なに考え込んでんの?」

「なっ、なんでもない」

「なんだよ、変な奴」

「……ごめんごめん」


今じゃ私との身長差は20センチ以上。

私が顔を上げない限り、翔くんに私の表情は分からない。

だからこうして、いつも彼は腰を折って私の顔を覗き込む。


「泣きそうな顔してる」

「……そうかな」

「なんか、隠してる?」


見透かされそうな瞳から逃れるように顔を逸らす。


「可奈」


不機嫌な声にビクリと肩が跳ねる。臆病者な私は、昔も今も変わらない。