さっきの甘い時間を思い出すと、不思議と幸せな気持ちになれる。


「お姉ちゃーん!今から遊ばなーい?」


酔っぱらいであろうオジサン。
いつにもなく面倒くさい…

一瞬にして幸せは吹き飛んだ。


「遊びません」


そう言って、その場を離れようとした。


「いいだろー?ほら!こっち来いよ!」


「った…」


腕を引っ張られ、離れることが出来ない。

いくら酔っぱらいでも男は男。
男の力にかなうわけがない。


時刻は9時。
このホームには常に人が少ないため、今日も非常に少ない…というかいない、って言ったほうが正しい。


線路を挟んだ向かい側に人がいるけど、誰も助けてはくれない。見てみぬフリ。

「離せっ!」


引っ張られた腕を上下に振り、相手を振りほどこうとしたけど、


「威勢がいいのは嫌いじゃないね〜」


なんて始末。



もう…和也っ!助けてよっ!


さっき見送ったはずの和也を思い、必死で抵抗する。