毎日毎日よく降るなあ。

アタシはそんなこと思いながらホウキを杖にして窓の外を眺める。


「ちょっと!サナ!
何掃除サボってんの!」

背後から聞こえる大きな声にびっくりして振り向くとそこには友人の樫原 リノ(カタギハラ リノ)が立っていた。


「リノ…」


「早よ、
掃除終わらせてそれから今日は清水寺付き合ってって約束してたやろ?」


もう、
何が清水寺なんだか。

地元だよ?

ここ京都。

アタシ生まれてからずっとここ。




なのになんでいまさらそんなとこわざわざ学校の帰りによらなきゃなんないの。

不満な思いが顔に出たのかリノがむっとした顔をしてアタシを指差しながら言う。


「今日こそ!
縁結びの神さんとこ行くんやから」


彼女が目的としている神社はその清水寺を通り抜ける途中にある。

それにしてもなんで付き合ってる彼がいるくせにそんなとこに行きたがるんだろ。

もういいじゃないの。

それ以上何を望んでるの。



「はい、はい」

恋愛に興味ないなんて言ったらウソになるけど。

アタシ、今は彼氏がほしいとかそういうのってあんまり思わない。






これは見栄張ってとかそういうんじゃなくて。

ホントに。


こうして友達とじゃれて遊んだりしてるほうがずっと楽しい。

恋愛よりも平和な学校生活のほうがいいなんて思ってるんだけど。

ちょっと変?


「面倒くさそうに返事するんやね、
そんなやからいつまでも彼氏できへんねん」


「そんなん関係あらへんもん」


「いや、大いにある。
今度彼氏から誰か紹介してもらおっか?」


アタシは顔を左右にぶんぶん振って

「いらんもん!」

そう大きな声で答える。




それにしても雨。

あがらないかな。


こんな雨の中行くの嫌なんだけど。


でも時期的に仕方ない。

今は6月。

梅雨の真っ只中。



関西はいつも7月中旬頃に梅雨が明ける。

まだまだ続くのかー。



長いなあ。












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「もう靴がぐちょぐちょになってしもたやんか…」

アタシは足元を見ながら息を切らして階段を上がる。


清水寺は二寧坂、三寧坂を登ったところにある。

このあたりは典型的な京都の観光地でお土産屋さんも多い。

お菓子の試食とかお茶の試飲とか。



両方とも坂はそんなに長くないんだけどなぜか三寧坂に入った途端に息が切れる。

やっぱり急勾配になるから?





あ、そういえばこの坂には言い伝えがあったんだっけ?

おばあちゃんが言っていたことを思い出す。

でもどんな内容だったかまでは思い出せない。



それにしてもしんどーい。

清水寺なんて小学校の遠足以来かもしれない。



「でも雨のほうが観光客も少ないからええやん?」

リノは雨を全く気にしないで石段を登る。

気にしないっていうか傘、
ひとつだけ。


私は今日、
雨降らないと思ったから持ってきてなかった。