「悪いけど、こいつ俺のツレなんで。」
晶は見た事ないくらい、迫力ある睨みを嵐に向けていた。


嵐は勝てないと思ったのか、舌打ちして私の手を放して去っていった。




「晶。」
「ごめん。遅れて…。
大丈夫?」
晶は優しい顔に戻してそう聞いてきた。


私は何だか晶のその顔を見ただけで安心できた。




「うん。
大丈夫だよ。」
「そっか、良かった。
じゃあ行くか。」
晶は私の手を引いて歩き出した。

私にとっては、誰かと手を繋いで歩く日が来るなんて思ってもなかったので、嬉しかったけど緊張した。



「晶、今日何だか感じ違うね。」
私は晶の私服姿を見た事がなかったので、ちょっと晶が別人に見えた。


「そう?
一応、ちょっとはおしゃれしてきたんだけど…変じゃないか?

服屋の店員に薦められるまま買っちゃったんだけど…。」
晶は不安そうに私に聞いた。



「全然そんな事ないよ。
よく似合ってる。」
私は本当にそう思ったので、笑顔でそう答えた。


「そっか。
ありがとう。

李緒も今日凄い綺麗!!」
「ありがとう。」


そんな慣れない会話をちょっと照れつつ話してるうちに、映画館に着いてしまった。

人が結構多くて、バレないかどうかちょっとひやひやした。




あっ、でも街でも気づかれなかったし、大丈夫だよね…意外と。

そんな事を思いながら、結構並んでる座席券売り場に続く列に並ぼうと動き出した。