「何??」
「いや、急に出てっちゃったから、どうしたのかと思って。」
素っ気なく聞いてみると、少し心配そうに南郷はそう言った。

「みんな、馬鹿だよね…。
無い物ねだりばっかりして。」
「えっ?」
南郷は突然私がそんな事を話し出したので、少し吃驚したように声をあげた。


「だってさ、みんないっぱい時間があるじゃない。
やりたい事だって、たくさん出来るじゃない。
どうして死にたいなんて言えるのか、理解に苦しむわ。」
「……誰か、そんな事言ってたの??」
少し言葉を選びつつも南郷はそう聞いてきた。


「ホントに欲張り!!
どうして、健康である事を幸福に思わないの?
どうして、たくさん時間がある事を幸福に思えないの??
もう…時間がない人だって、居るのに……。」
「……碧井さん?」
少し感情的になりつつある私に、南郷は戸惑ったように名前を呼んだ。



そこで、自分が取り乱しかけてた事に気づいた。


「ごめん、忘れて。
何でもないから……。」
私は何とか落ち着きを取り戻し、そう言った。


「どうして?
……何でいつも自分の気持ち隠すの??」
「良いから、私の言った事は忘れて。
…じゃあね。」
そう言って、私は南郷の呼び止める声も聞かずに屋上から去った。


そのままあの教室に行くのも嫌なので、保健室に行って、全授業が終わるまで寝ていた。