花の模様が一つ付いたシンプルな指輪
プラチナで出来ているリングの中には…………
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…………コイツ
目が覚めたら冷やかしてやろう
2時間程たっておばさん達が荷物を沢山抱えて戻ってきた
俺に恐縮しながら礼を言うおばさんは疲れている様にみえた
恐らく昨夜は一睡もできなかったんだろう
結局省吾の意識は戻らず俺は病室を後にした
ラーメン屋に寄ってビデオ借りて家に戻ると携帯が鳴った
━━━━佐久間 瞳
一瞬迷ったが電話に出る事にした
でも、話しをするとどうやら省吾の事は知らない様に思えたけれど………
何か気になってかけてきたに違いなかった
電話を切る寸前思わず
"省吾は大丈夫だから"
と言ってしまった
まだ意識が覚めない不安を打ち消したくて…………
明らかに佐久間の様子は変だった
徹さんに伝えた方が良いのだろうか…
躊躇いながら携帯を眺めていると
〜〜♪〜〜♪
着信!
「はい 田崎です」
「田崎さん…………
朝比奈です
省吾の母です」
「あ!お母さん どうかしましたか?」
「今
今 省吾の意識が戻りました
でも――――」
「あの!今からそっちに行きます!」
俺は急いで家を出た
また いつもの様に
照れ笑いをするアイツに会える
―――――――――
――――――
病室のドアを開けると
ベットを少し起こして座る省吾が見えた
その姿を見てホッとした
「こんばんは………
省吾!大丈夫かお前!」
「……………」
「おい 無視すんなよ」
「あの……どなたですか?」
!!
ベットの横には辛そうな表情を浮かべる省吾の両親が立っていた
俺はショックで一瞬息を呑んだ
医師の話では事故のショックで一時的に記憶が飛んでいるのだろう
と言われたらしい
脚の手術もまだ控えており、徐々に回復していくでしょう
そんな風に言われたとも言っていた
とにかく無理矢理思い出させる様な事は逆に省吾に悪い影響を与え兼ねないので、まずはもう一度友達になる所から始め様と考える
この先の事も不安だが、俺は佐久間の事が気になった
智也に省吾の事を伝えるとやはり、電話の向こうでショックを受けていた
けれどアイツの回復の為には俺達だって何か協力したい
省吾の体調を考え省吾の両親と相談し、暫くの間は俺と智也が交代で見舞いに行く事になった
記憶が戻るまでは………
◆瞳 side
やっぱり何かがおかしい
「省吾は大丈夫だから」
何故そんな事を言うの?
あの電話から早1週間が過ぎた
一度は納得したものの、時間が経つにつれ不安が広がった
何度無理矢理納得しようと思っても
無理だった
彼の携帯に電話しても通じない
彼を探る様で嫌だったけれど私は智也さんに電話をしようと公衆電話に向かった
「瞳ちゃん!」
振り返ると
真剣な顔をした北嶋さんが立っていた
「話があるんだ」
「………あの………
先に電話してきても良いですか?よければその後に…」
ごめんなさい と頭を下げ背中を向けると
「待って!……省吾に電話するのかい?」
驚いて振り向くと
北嶋さんはさっきより険しい顔をして私を見ていた
私が曖昧な表情をすると
「省吾………アイツは今事故で入院してるんだ」
「え! 事故? どういう事ですか?」
「ここじゃなんだから、向こうで話そうか」
そう言って自動販売機の前にある休憩スペースに私を座らせる
色んな事を聞きたいけれど、北嶋さんはあの麻衣さんのお兄さん
情報源は間違いなく彼女だ……果たして信じる事できるだろうか
そんな事を考えていると北嶋さんが私にコーラを差し出した
「良かったら飲みながら話そうか」
「ありがとうございます
あの………
彼が入院してるって本当ですか?」
「本当だよ」
北嶋さんは事故の話をしてくれた
途中不安で泣き出した私を心配しながら
ゆっくりと説明をしてくれた
「恐らく、瞳ちゃんに心配かけまいと……状況が落ち着いたら連絡しようとしていたんじゃないかな」
「そんな………
会いたいです
…………麻衣さんは
麻衣さんは病院に行ったんですか?」
小さくため息をついて
躊躇いながら重い口を開く
「アイツ……まだ省吾の事諦められないらしい
こんな話、彼女である瞳ちゃんに話すべきじゃないのはわかっているんだ
俺がいくら言い聞かせても話は平行線なんだ」
「そもそも、事故にあった経緯も麻衣と麻衣の友達が絡んでいるからな
病院に行っても会わせてもらえないらしい」
「え?どうして?」
「う〜ん それで、俺の後輩に連絡取ったらどうやら家族の希望で一部の人しか会えないらしいんだ」
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「君の彼氏に思いを寄せている女のアニキの話じゃ信じたくは無いかもしれないけど
省吾は俺にとっても可愛い後輩なんだ
妹の事は俺にはどうしようもないけれど、妹をかばって君達の仲を裂こうなんて思ってはいないから」
眉を寄せ複雑な表情を浮かべながら話す北嶋さんに
私は何と言葉を返したら良いのか困ってしまった
「私………来週帰ります。
会えるかどうかわからないけれど、行って自分の目で彼の無事を確認してきます」
不安で一杯な癖に……
精一杯気丈に振る舞い部屋に戻った
北嶋さんにああ言ったものの、私は正直怖かった
どう考えても普通じゃない事は明らかで、私にどこからも連絡が来ないと言う事も不安を大きくさせた
翌日実家に帰宅の連絡をすると由美子さんの様子が…
「お母さん?今週末帰ろうと思うの……この間帰ったばかりだけど、省吾さんが入院したらしくて」
「え!……誰に聞いたの?」
「省吾さんの先輩が今警察学校にいて……その人の妹さんが省吾さんの事故の時同乗していたらしくて」
「そっか…ごめんね瞳ちゃん。知らせなくて……
徹さんと迷ったの 知らせるべきかどうか……
もう少し状況が落ち着いたら知らせ様と思っていたの
でもよそから瞳ちゃんの耳に入るなら、ちゃんと知らせれば良かったね」
「ううん。離れている私を気遣かっての事だよね
じゃあ帰ったらよろしくね」
そして私は田崎さんにも連絡した
詳しい事は電話では無くて会った時に説明する
と、言われ土曜日に病院のロビーで待ち合わせする事にした
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悶々とした日々を過ごしながら
約束の土曜日を迎えた
市内で一番大きな総合病院に今省吾さんは入院をしている
土曜日の午前中と言う事もあって外来は混雑していた
約束の10時を少し回った頃正面玄関から田崎さんと智也さんの二人が並んで入ってくる姿が見えた
私はスッと立ち上がりペコッと頭を下げた
「病室に入る前に少し話をしよう」
と田崎さんに言われ私達は病室内の喫茶店に入った
コーヒーが運び込まれる僅かな時間私達は互いに重い空気の中ただじっと外の景色を眺めていた
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