夜奈だけには…
夜奈だけには、自分の正体を知られたくない。
彼は、心底そう思っていた。
けれど、どんなにそう強く思っても、生まれつきの悪魔の本能は頭に刻み込まれているのだ。

「ふーん。
あ…!リンゴ飴!!」

リンゴ飴が売っているお店を見つけると、嬉しそうに駆け寄っていった。

「おばさんっ!
リンゴ飴一つ…!!」

少女は、リンゴ飴を売っているおばさんに、素早く百ガットルを渡した。
彼にまた、払わせたくなかったのだ。

「あいよー!!」

おばさんは、百ガットルを受け取ると、エプロンのポケットにいれて、白い板に刺さっていた、大きめのリンゴ飴を少女に渡した。

「ありがとうっ…!!」

少女は、リンゴ飴を受け取ると、お礼を言い食べ終わった、かき氷の入っていたプラスチックの入れ物を近くに置いてあるゴミ箱へ捨て、両手でリンゴ飴を持ち、ペロリと満面の笑みでなめ始めた。