だが、彼がお金が足りなくなる訳がなかった。
彼は人間に自分の身を任せたくなかったのだ。
つまり、人間が運転するタクシーやバスなどには、乗りたくないという訳だ。
人間なんて信用できない。
それは、生まれてからずっと彼の頭の中にある考えだった。
だが、そんな事を少女に話せる訳がなかった。


彼は、唇を軽く噛み締め、はにかみながら微笑んだ。

「金銭の事なら気にするな。
…タクシーに…乗るか…」

彼は、苦笑いをしながら目を細めた。