社長室から出てきた彼を見ると、残業をしていた社員等が立ち上がり、‘お疲れ様です’と言ってお辞儀をした。

彼は、ニッコリと微笑み、
「お疲れ様。」
と言いながら、右手を軽く挙げて、‘じゃあな’とでも言うように、歩き去り、エレベーターに乗りこんだ。


そして、エレベーターで一階まで下り、会社の外へ出た。

「そうか…雨が降っていたんだ。
…まずいな…傘を忘れてしまった…。」

彼は、空を見上げながらぼやいた。

彼の家は、会社から歩いて五分程の場所に位置していた。