少女は、強い眼差しで彼を見つめながらそう言った。
なんて清純な心を持っているんだ。
自分の事は自分で何とかする。
人間の事を…こんな風に思うなんて…。
彼は、そう考えながら、フッと笑みを浮かべた。
「そうか。じゃあ、このカードは予備のために持っておくといい。」
彼は、カードを少女の横に置いて、立ち上がった。
「あ…ありがとう……!」
少女は、申し訳ないというような表情でお礼を言った。
彼は、ドアの前で行き、ドアノブに手をかけた時、後ろを振り返った。
「……名前……何て言うんだ…?」
彼は、ふと少女の名前が知りたくなった。
勿論、彼が人間に名前を聞く事は初めてだった。
人間は彼の中では、みんな‘人間’という食べ物であり、名前なんてどうでもいい事だったからだ。