「ねぇ、あなた、名前はなんて言うの?」

階段を早歩きで上っている彼に対して、少女が機嫌を伺うように尋ねてきた。

「名前…か。樺羅龍だ。」

彼は、後ろを振り向かずに歩きながらそう言った。

「へぇ…。」

少女は、何を話しだそうかと、難しい顔をしている。けれど、彼は 自分の素性については、本当の事を言ったりしない。それは、相手が自分を陥れる事になるからだ。

彼は、黙々と足を進めた。またその後を、追いかけるように 少女も黙々と階段を上って行った。

階段には、赤い絨毯がひかれていて、手すりは金でできていた。