彼は家の中に入ると、けだるさを吐き出すかのように深呼吸をした。

重たい足取りで、浴場へ向かい、洋服のについた血を力強く手でこすり、洗い流した。
そして、頭から足までを良く洗い、浴室に何着も用意してある、黒のジャージに着替えた。

鏡を通して自分を見ると、唇に目をやる。
口を開くと鋭い歯が見える。
そうして改めて自分を見ると、湧き上がってくる虚しさ。

「悪魔…か。」

彼はそう呟くと、鏡から目を逸らし、しばらく目をとじていた。
まるで、現実から目を背けているかのように。