「嘘なんかじゃないって!」

彼が、こんな小さな事に対して、むきになるのは初めてだった。
それだけではない。
彼は、いつもは丁寧な言葉遣いなのに、なぜだか言葉が感情と共に乱れていっていた。

「…何ソレ。
そんなにムキにならなくてもいいのに。」

少女は、呆れたようにそう呟いた。
彼は、その言葉でハッとなった。
確かにそうだ。なんでこんなに、ムキになっているんだよ俺は。そう思いながら咳払いをした。

「すまない…。
けれど、そんな言葉遣いは、大人に向かってするもんじゃない。不愉快だ。」

彼は、顔をしかめながらそう言った。
この言葉は、彼の素の思いの言葉だった。