本石君:「吉崎先生!!」


物理実験室の前の廊下で、いつも良く喋って来てくれる男子生徒の本石隆平(モトイシ リュウヘイ)君に呼び止められ、振り返る。


「本石君、どうしたの?」



本石君:「先生、今日で最後なんスよね!?もう帰るんですか?」



私より、4つも年下なのに背が高く、私は見下ろされてしまう。


何ていうか、本石君って厳つい感じなのに、話しかけてくる表情は意外と可愛く笑う。


ギャップ…っていうのかな。


「そうね、最後ね。うん、物理実験室のプリント、高木先生の所へ持って行ったら終わりかな?」


そう笑顔で答えて、物理実験室のドアを開けようとドアノブに手をかけた。


本石君:「…そうっすか…。」


少し俯いた本石君は私の後を追って、物理実験室へ入ってきた。


「??…本石君はまだ帰らないの?…あ、部活は?休みなの?」


私の後をついて来る本石君に少し疑問を持ち、棚の中のプリントを見ながら聞く。


本石君:「部活は…あるんですけど。…吉崎先生最後だって聞いて…。今日、先生の授業なかったし…。最後の授業も受けれなかったし…。」