高木先生の"良い奴"の一言で、杉野のことを言っているのだとすぐに分かった。


「…分かりませんね…。俺はもう30だし、俺よりももっとこの先に出会える良い人がいると思うんですよね。」


高木先生:「それはそれで良いんですけどね!…確かに若ければ若いほど可能性は大きいです。」


杉野の幸せを思うと、俺は杉野のことを想ってはいけない。


高木先生:「けれど…それで悔いがないのなら別ですが…、自分にとって相手は世界でたった一人ですよ?」


「…。」


たった一人…。



高木先生:「俺は、絶対離したくないと思いました。奈緒が、良い人を見付けて、そっちへ行くなら俺は構わない。誰よりも、アイツの幸せを願ってます。」



高木先生はパラッとプリントをめくりまた読みはじめた。


高木先生:「ただ…、俺のことを好きでいてくれるなら、ずっとそばにいようと思います。アイツの望みを叶えることが俺の幸せなんです。」


そう微笑んで、黙々と読む高木先生。



何て、寛大な人だろう…。



その寛大さに尊敬してしまう。



きっと吉崎は幸せだろうな。




俺も、誰かを幸せにできる男になろう。