あ、この笑顔。


見たことないかも。


包帯を
解かれながら
そんな事を
考えていた。


「おい…。よく我慢できるな…。」


坂口君は
傷口を見て
一言呟くと、

息をのんで
黙ってしまった。


その言葉に
誘われて、
自分の傷を
見てみる。

縫われてた
はずのところが
またしても
裂けている。


でも今回は
傷が浅く、

すでに
血は止まっていた。


「今回は包帯を巻きなおすだけにするけど…。」


その先は
何も言わなかった。



無理をするな。



そうゆう事だろう。


真剣に
私の指を見つめる
その瞳を

ゆっくりと
覗き込む。


少し茶色がかった
その黒目は、
ピンと張りつめ、
憂い気に見えた。


「お前さ。」


ふとその瞳が
私の瞳を激しく
捕らえる。


「な、何?!」


容赦無く向けられる
まっすぐな視線に、
思わず目を
そらしてしまった。




けれど、


自分から
話しかけといて、
その続きを
話そうとしない。


「…何?」


もう一度そっと
声をかけ、
そらした目に
視線を戻す…。




…。




…え…。