保健の先生が
居ない。


お昼の
時間なのかも
しれない。


でもはっきり言って、
今は
それどころでは


ない。


「傷は心臓より高くしてろ。」

「は、はい。」


目の前に
私の好きな人が
いる。

私のために、
新しい包帯やら、
ガーゼやら、

せわしなく
動いている。


かっこいい…。


素で見とれて
しまっていた。


「…あ!」

「何だ。」


思わず叫ぶ
私の顔を
真剣に
覗き込んでくる。


「い、いや。授業のノート…。坂口君も誰かに借りないと…。」


また眉間に
皺がよる。


「…いや、お前自分の怪我の心配しろよ…。」


まっすぐに
顔を見てみると、
心底不思議そうに
私を見ている。


「は、はい。うわー。痛そう。」


顔を見るのが
恥ずかしくなり、
傷から出ている
血を眺める。


「…。」


坂口君の
動きが止まった。


見上げてみると、


「人事かよ…。くく…。」


困った顔をして
笑っていた。


そして
少し落ち着いてから、
ゆっくり
包帯を解いていく。


私の手を
壊れ物のように
優しく包みながら…。