「おはよー!」

梓さんの
元気な声が
教室に響く。


その後ろから
坂口君が
ゆっくりと
教室に入ってきた。


坂口君だ…。


自然に目が
坂口君を
追っていた。


「よお、坂口。お前昨日さー…」


坂口君は
男の友達が多い。

すぐに友達に
囲まれてしまった。


教室の前で
かたまって、
なんだか話を
している。





今日も梓さんと
一緒に来たのかな。

二人は
どんな関係なんだろ。


胸の奥が少し
鈍く痛んだ。


キーンコーン…


チャイム。



私の前の席に
着くために
坂口君が
歩いてくる。


無言で席に
着いた坂口君は
私が昨日怪我したのを
忘れているようだった。


よかった。


私の怪我
自分のせいだなんて
思ってないって
事だよね?


…まぁ、

ちょっとくらい
気にしてくれても…

なんて思ったりも
したけど、

それよりも

坂口君が
自分のせいだなんて
考えている方が
私を辛くさせる。




席に着いた
坂口君の背中を
見る。

いつもより
大きく感じる。



怪我なんて
自分にとっても
どうでもいいことだった。





坂口君…。




昨日は
パン、
ありがとう。


すごく
すごく


嬉しかったんだよ。